黒船家電と呼ばれる海外メーカーの家電が売れています。
数年前からブームを先駆けて、掃除機のダイソンが売れ始めました。販促新聞の1号でも触れていますが、ダイソンの広告戦略は非常に優れています。
商品を宣伝することを考慮していない日本企業のCMに対して、ダイソンのCMの効果は絶大です。
その後は中国や韓国のメーカーの商品が、低価格を売りに日本に入ってきました。しかしこれらの商品はあくまでも低価格が魅力であり、商品自体の魅力が高いわけではなく、ブームにはいたっていません。

しかし、最近では欧米のメーカーの商品が売れ始めています。これまで売り場になかった海外メーカーの商品が増えたのはなぜか?
その要因は、電気用品安全法という、海外メーカーには取得が難しいとされていた法律を、本腰をいれてクリアーしてきたことにあるようです。
そして売れている最も大きな要因が、その機能性とデザイン、ブランド力にあります。
日本製の家電は昔から高性能を売りにしてきました。どの様な用途にも対応できるように、様々な機能が付いています。

 
一方、黒船家電は、機能を絞り込み特定の用途に特化した商品になっています。その絞りこまれた用途が、新たな市場を呼び込んでいます。
ブランド力に弱い日本人にとっては「海外モノ」というイメージもたまりません。しばらくはこのブームは続くのではないでしょうか?
当然のことですが、日本メーカーもこのまま指をくわえているわけにはいきません。
先日テレビ番組でこのブームを取り上げ、大手電機メーカーでも対策を取り始めている様子を伝えていました。

商品開発にあたり、黒船家電に負けない新たな発想が必要と考え、若手技術者を集めチームを作ったとのことです。会議では20歳代の技術者が、ホワイトボードや資料を使い、新商品に向けての様々な提案を説明していました。素人の私が見ても、「ん?そんなの需要ある?」と思ってしまうものもありますが、活発に発言していました。
しかし、問題はこれから。その開発チームには、あきらかに管理職と思われる50歳代の男性が参加していました。
そして若手開発者の提案発表に対して、ダメ出しにも等しいコメントをしていたのです。

 
ちょっと待って!
 

その若手を中心とした開発チームの結成理由は、黒船家電に負けない、新発想の商品開発にあるはず。
それを従来の開発を行なってきた管理職が仕切ったら意味がないですよね?

確かにベテランや管理職には、これまで培ってきた経験やノウハウがあります。
しかし、その従来の考え方に見直しが求められている以上、それらの経験はまったくの邪魔、経験をもとに考えていては従来の殻は破れるはずはありません。
殻を破ることは実績のある大手だからこそ難しいのかもしれませんが、同じようなケースはどこにでもあるような気がします。

この様なケースの場合、最善の方法は「権利と権限をゆだねる」ことにあります。
もちろん、既存の常識を捨てた商品開発に会社の全てをかけていたのでは、危険すぎます。しかし、ある程度の制限はあっても権利と権限の上で自由にやらせることが重要です。

 
従来から、日本家電には、機能が多すぎ、マニュアルが複雑などの批判があります。私が20年前から使用しているAppleではiMac、iPod、iPhone、iPadとこれまでに無い新しい商品を販売してきましたが、一つの商品に全てを詰め込むことはせず、用途ごとに分けています。さらに大きな特徴として、賛否はあるかもしれませんが、一般的な操作マニュアルが無いことがあげられます。iPod、iPhoneなどは、それまで誰も手にしたことのない商品ですので、本来なら操作方法を知るためにマニュアルを熟読しなければならないはずです。(それまでの携帯電話のマニュアルはすごいボリュームでした)しかし、マニュアルを読まなくても直感的に操作できることをポリシーとして工夫されています。

最近のテレビCMで「マニュアルが簡単」と新発売のパソコンをアピールしていましたが、古くからのAppleユーザーからすれば「マニュアル読まなきゃいけないんだ」とマイナスに感じてしまいます。
 
少し話がそれましたが、新しい何かや新しい価値を求めた場合に、それまでの延長線上に必ずあるとは限らないということです。最初から既成概念をもとに「無理」「ダメ」と思っても、そこから工夫・発展させることで新しいことははじまります。
 
今回の黒船家電と日本家電の対比は、いかにも日本人ぽいなと痛感してしまいます。技術は高く応用力は高いのに、独創性が足りない。よく言われる言葉です。電機メーカーだけでなく、他の業種でも新機軸の商品を求めて、主婦や女子高生などを集めて意見を聞いて開発のきっかけを模索する動きが盛んです。

しかし、マスコミ等による流行を追いかけることが多い日本人に聞いたところで、本当のヒントがあるかは疑問です。